解説と資料 002

ウェブテスト002「【高校入試】社会科(歴史)5問【難しい】」の解説と資料です。


(1)【俳句の問題】

(正解)ウ(佐渡金山に関する説明)

(図の人物)→「松尾芭蕉」…俳諧(俳句)の芸術性を高めた、江戸時代の人物です→「元禄文化」。
(地名)俳句は「五・七・五」→(  )の中は2音。

荒海や(  ) によこたふ(う) 天の河

それぞれの選択肢をみていきましょう。

(ア)一向宗の門徒が守護を倒し、約100年にわたり自治を行った。
→室町時代(戦国時代)の「加賀」(かが)(石川県)の「一向一揆」に関する説明です。

(イ)五層からなる壮大な城が築かれ、楽市・楽座令により商工業が栄えた。
安土桃山時代織田信長が「安土」(あづち)(滋賀県)でおこなった「楽市・楽座」に関する説明です。また、この城は「安土城」です。

(ウ)貨幣の原材料として使われる、の代表的な産地であった。
→金の産地としては、「佐渡」(さど)(新潟県)の金山が有名です。佐渡金山は江戸時代から採掘が盛んになりました。

(エ)北方との交易によって栄え、中尊寺金色堂などが建てられた。
平安時代の末に、「奥州藤原氏」が栄えた「平泉」(ひらいずみ)(岩手県)に関する説明です。

これらの中で、2音は(ア)「かが」と(ウ)「さど」です。

この俳句は、教科書にも載っていますので(東京書籍)、それを知っていれば「佐渡」→(ウ)と正解は得られます。とはいえ、これはかなり難しいことだと思います。よって、次のように考えて答えを求めるのがよいでしょう。

「松尾芭蕉は江戸時代の人物 → ×加賀の一向一揆 → 〇佐渡の金山」

それでもこれはかなり難しい問題といえます。
教育委員会の資料によれば正答率は19パーセント程度です。


(2)【日本の時代区分】

(正解)エ

歴史の時代区分には、さまざまなものがありますが、大きく分けると日本の場合は、「原始」→「古代」→「中世」→「近世」→「近代」→「現代」の6つに分けるのが一般的です。

それぞれの時代の特徴は次の通りです(教科書の用語解説参考)。

  • 原始」→旧石器時代・縄文時代・弥生時代
  • 古代」…中世に先立つ時代の名称。文明と階級が成立していく時代である。日本では、一般的に弥生時代から平安時代までを指す。→(弥生時代)・古墳時代・飛鳥時代・奈良時代・平安時代
  • 中世」…古代と近世の間を指す名称。日本では、一般的に平安時代の末期から戦国時代を指す。武家政権が成立し、荘園制がじょじょにくずれていった時期。→鎌倉時代・南北朝時代・室町時代(戦国時代)
  • 近世」…ヨーロッパではルネサンス宗教改革から、近代革命の前までの時代を指す。日本では、一般的に安土桃山時代から江戸時代までを指す。主な特徴として、武士による権力の統一兵農分離による民衆支配、全国的な規模の商品経済の発達などが挙げられる。→安土桃山時代・江戸時代
  • 近代」…ヨーロッパでは古代・中世・近世に続き、近代革命・産業革命によって成立した資本主義社会を指す。日本では、一般的に明治時代、大正時代、昭和時代の第二次世界大戦終結までを指す。→明治・大正・昭和(~1945年)
  • 現代」…近代に続く、より現代に近い時代。日本では、1945年の第二次世界大戦終結後を指すことが多い。最近では、高度経済成長以後を指すという考え方も出てきている。→昭和(1945年~)・平成以降

この問題の場合、次の2つの時代が始まる時期がわかれば正解は得られます。
・「中世」…鎌倉幕府の成立→12世紀末
・「近代」…明治維新→19世紀末

この問題のように、時代区分そのものをとりあつかうものは、最近はあまり出題されません。
教育委員会の資料によれば正答率は17パーセント程度です。


(3)【日明貿易】

(正解)6(ⓐ寧波 ⓑ銅銭)

ⓐ 日明貿易の場合、九州を出発した船は、東シナ海をわたり、「寧波」(ねいは/ニンポー)に入港しました。よって、ⓐ→「寧波」です。

  • 「重慶」(チョンチン/じゅうけい)…長江の河口からおよそ2,000キロメートル上流にある都市。
  • 香港」(ホンコン)…「」と「イギリス」の間でおこなわれた「アヘン戦争」(1840年)、の講和条約(「南京条約」1842年)で、イギリスに割譲(かつじょう:条約により領土を移転すること)されました。香港の主権は、1997年に、イギリスから中華人民共和国へ返還・移譲されました。

(参考資料)東京書籍『新しい社会 歴史』80ページ。
(注)「香港」が歴史の話題になるのは19世紀以降です。

ⓑ 日明貿易の貿易品目は次の通りです。
(日本が輸出)・銅・硫黄・漆器など
(日本が輸入)銅銭・生糸・絹織物・書画・陶磁器など
よって、ⓑ→「銅銭」です。

正しい組み合わせは、6(ⓐ 寧波 ⓑ 銅銭)になります。

ⓑは基本的な設問ですが、ⓐの答えとして「寧波」を選ぶのは、かなり難しいと思います。
教育委員会の資料によれば正答率は13パーセント程度です。


(4)【東アジアの近代史】

(正解)オ(R-P-Q)

選択肢の内容は、次の通りになります。
P 孫文が中国国民党を結成(1919年)→「第一次世界大戦後のアジアの民族運動」
Q 加藤高明内閣(1924年頃)→「普通選挙法」
R 孫文にかわって袁世凱が臨時大総統となる(1913年)→「辛亥革命」

流れとしては、次の通りです。

「辛亥革命」→「第一次世界大戦後のアジアの民族運動」→「普通選挙法」

これでいちおう、正解の「オ R-P-Q」を求めることはできます。

次に、くわしい流れをおさえておきましょう。
〔参考:教科書(東京書籍『新しい社会 歴史』193・214・219ページ)〕
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◆「辛亥革命
(前提)20世紀に入り、中国では「」を倒して漢民族の独立と近代国家の建設を目指す革命運動が盛り上がる→中心になったのは「三民主義」をとなえた「孫文」。

1911年 長江中流域の武昌(武漢)で軍隊が反乱をおこす→革命運動が全国に広がる。
1912年 孫文が臨時大総統となり、「中華民国」の建国が宣言される。

孫文の臨時政府は軍事的に弱かったため、臨時大総統の地位を「袁世凱」にゆずりわたす(1913年)。袁世凱は独裁的な政治をおこなう。

袁世凱の死後、中国は各地の軍閥によってばらばらに支配されるようになる。
—————–
◆「第一次世界大戦後のアジアの民族運動」
(前提)第一次世界大戦後、アジアやアフリカでは、民族独立を求める運動が高まる。

1914年 第一次大戦(-1918)がはじまる。日本は「日英同盟」にもとづいてドイツに宣戦布告。
1915年 日本は、中国に対して「二十一か条の要求」を出し、「山東省」における「ドイツ」の権益を引きつぐことなどを要求する。

1919年 「パリ」講和会議。中国は山東省の権益の返還を要求したが、要求は拒絶される。5月4日、北京での学生集会をきっかけに反日運動がおこり、帝国主義に反対する全国運動に発展(「五・四運動」)。

この運動をきっかけに、孫文は「中国国民党」(国民党)を結成する(中国共産党は1921年に結成)。

1921年 「ワシントン」会議で、山東省のドイツ権益を中国に返還する。
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◆日本の「普通選挙法」
(前提)第一次世界大戦後、日本では男子普通選挙を実現させようとする動きが高まる。

1924年 第二次護憲運動。憲政会党首の「加藤高明」を首相とする連立内閣が成立。
1925年 加藤高明内閣は、納税額による制限を廃止した「普通選挙法」を成立させた。これによって、「 25歳 以上の 男子」に選挙権があたえられることになった。また、同年、社会主義運動を取りしまるための法律として「治安維持法」が制定された。
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このように、「第一次世界大戦」を中心にして、流れをおさえることはできます。

ただ、(1911年)「辛亥革命」 → (1925年)「普通選挙法」というように、10数年の間のできごとですので、正確に並べるのはかなり難しいと思います。
教育委員会の資料によれば正答率は11パーセント程度です。


(5)【徳川吉宗の政策】

(正解)2(ⓐ 中国語 ⓑ キリスト教)

これはかなり難しい問題です。この問題が出された2020(令和2)年3月の時点で使用されていた教科書の説明では次のようになっています。
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◆教科書の説明(当時)

(徳川吉宗は…)「キリスト教に関係しない科学技術などの、漢訳されたヨーロッパの書物の輸入を認めました。」(東京書籍『新編 新しい社会 歴史』〔平成27年3月検定済〕126ページ)

→これで、「ⓐ{ 中国語 }に翻訳されたヨーロッパの書物のうち、ⓑ{ キリスト教 }に関係のない書物の輸入を許可した」ことが正解となることがわかります。
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ⓑの「{ キリスト教 }に関係のない書物」の輸入が認められたことは多くの方が正答したと思いますが、「ⓐ{ 中国語 }に翻訳されたヨーロッパの書物」の部分を正解するのは、かなり難しいと思います。

また、現行の教科書の記述は次の通りですので、現在の中学生のみなさんにとってはさらに難しく感じたかもしれません。

「第8代将軍徳川吉宗が、キリスト教に関係のないヨーロッパの書物の輸入禁止をゆるめたことが、蘭学の発展に影響しました。」(東京書籍『新しい社会 歴史』〔令和2年3月検定済〕134ページの欄外)

この問題は、教育委員会の資料によれば正答率は8パーセント程度です。


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